なつが ゆく とき
なかないわたし なかなかなけない
とべないわたし はしわたりはしり
なつがちぢまる そらのしたから
とべないわたしはとびゆくあなたに
◇
思い出すとき
思い出すのは
春と夏と秋と冬と
思い出すのは
顔と声と髪と指と
切符を買って会いに行こう
あのとき行きの電車に乗って
花束持って会いに行こう
いまはどこにもいないと知ってて
◇
プラネタリウム・ドット・コム
電子の宇宙に飛び込んで
あなたの星に名前をつけた
ハンカチ落として帰ってきたの
偶然だよ
ずっと袖で顔をおさえてる
◇
ことばあそび
暗い クライ 辛い
期待したいみたい
理解 破壊 疎外
誓い、もとい違い
廻る 変わる?据わる
破綻 加担 途端 『異端』
どうしようよ思考回路
こうしようよ死後解剖
頭のコアにあったのは
10文字足らずの言葉の は
◇
閉じ込めて
言えない思いは
喉を伝って胸を締める
つたわらない思いは
指を伝って空に漏れる
どこにいこうかな
行き場をなくしたわたしと
どこにいるのかな
行き場をかくしたあなたと
◇
声を
届かないあなたへ
届かない声を
届かない声を
気付いたらこっちを見て
聞こえたら手を振って
わたしの声は
もう
喉が痛くて出てこない
◇
あいまいゆう
曖昧 甘いわマイmy、you
言うわ、言う、ではでもでもでも
she,he, 秘ず秘む
see “ha-ha…!!”
甘いは曖昧ままにはまいまい
参ったまあいい曖昧ままいい
でもまだ黙ったまままだまいまい
参った曖昧いいまま愛ない
◇
さむくなったね
きみは夏が持ってった
寒い部屋とわたしを残して
寒くなったね と言えない世界に
わたしはひとり 何を思う
寒くなったね が聞けない世界で
わたしはひとり 誰を想う
きみに焦がれた夏の暑さへ
そのまま一緒に呑まれようか
◇
空っぽになったら
空っぽになった体には
また何かを埋め立てればいい
空っぽになった心には
また何かを詰め変えればいい
空っぽになった私には
空き容量がたくさんある
好きなときに充たせばいいよ
お腹が空けばたくさん食べれる
◇
夜ごと白昼夢
白昼夢
ふわふわ
いないいない
いけないいけない
夜のおはなし
もう寝る時間
おとぎ話は平等じゃない
◇
生きていること
確かに私はあの時死んだ
家族に笑顔で見送られながら
確かに私はあの時死んだ
青と灰と格子に挟まれ
確かに私は今生きていた
笑って食べて好きを知って
確かに私は今生きている
心を揺らして涙を流して
◇
漂流
「なくしたものは なんだっけ」
言葉にすると痛くなる
なくしたものと引き換えに
手にしたものはなんだっけ
なくしたもののところには
あたらしいものがやってくる
そう言ってくれた春の日は
痛みも忘れて私を流した
「なくしたものは なんだっけ」
◇
お返事
制服を着て泣く私は
「笑えてますか」と手紙に書く
制服を脱いだ私は笑って
「泣いていたね」と返事を書く
◇
寝言
夢なら覚めないで
でも覚めるとこは覚めて
都合のいいとこだけ現実にして 後はゆっくり眠らせて
◇
空模様
雨の後には雲がかかり
雲がかかれば雨が降る
雨が止めば晴れるって
そんな話に力なく笑う
天気予報はあすも雨
傘を差す気分にもならない
週間予報は傘マーク
そういや傘すら持ってない
◇
ホットケーキにシロップ
ちゃんと焼いてね
ちょっと焦げたぐらいが好きなの
中途半端に焼かないでね
生焼けは食べられないわ
あなたの焼き方は
危なっかしくて見てらんない
◇
実
あの木を切ってまで
欲しかったものはなんだったの
切られた木は
もう
なにも実らない
欲しかったものは
触れることなく地面に落ちた
◇
そして空に
わかっていたのに
涙も出ないのはどうして
静かに起きた風がキャンドルの灯を消す
残り香は
優しく空を舞う
残り香は
哀しく空になる
◇
そのままで
わたしは わたしのままでいい
あなたは あなたのままがいい
このままで そのままで
そのままに あるままに
◇
鈴がなる
ついておいで わたしのみちへ
鈴がなる鈴がなる
ほらみてごらん 指さす先を
胸がなる胸がなる
しらないおとが聞こえるよ
しらないひとに出会えるよ
きれいなおとが聞こえるよ
きれいなあすに出会えるよ