寝言
迷惑メールの交換
その思いは
いつゴミ箱へ行く
◇
和訳
友だちだから
友だちにはなれないのね
フォーエバーもさようならも
わたしはできないの
◇
始まり
ずっと近くにいたのに ぼけっとしていたね
見せたことのない私が精一杯走り出す
あなたがすきかもしれない
すきになったかもしれない
すきじゃないほうがいいかもしれない
穏やかな波は理屈を飲み込んで
今 ゆっくりと水しぶきをあげた
◇
ディスプレイ
会いに行けなくて ごめんね
雑踏の中増殖する広告
捧げる祈りは左クリック
カウンターは廻る
終わらないスクロール
変わらないエピローグ
画面の向こうのきみは綺麗だ
◇
パイロット
低空飛行で会いに行く
いつだって縮められる螺旋の距離
私は今日も眠たいの
ハンドルさばきはギリギリセーフ
スレスレ着陸稀代のホープ
あなたに会いに行きたいの
螺旋の距離を飛び込み操り
夜空を飛び越え会いに行く
私は不眠のパイロット
◇
判定
いる いない
微妙な「好き」
問い詰めたいのはベストアンサー
好きな人
なる ならぬ
ただ分かるのは明日会いたい
◇
アクリルケース
密かに描かれた絵に
恋心
静かに抱き
指の先 そっと差し出す
世界と世界の境界線を撫でた時
あなたに愛を伝えたくなる
散りばめられた絵の具と
金銀に守られた
この時間
◇
帰り道
5月の赤信号
もっときみを知りたい
ぽっと赤くなる頬に
今恋が弾ける
◇
木曜の月
助けて 教えて 連れ出して
要らないものが多すぎるから
私はわたしを捨てちゃいそう
昨日の夢
時計の秒針
あの人の日記
満月の夜
こんな名前も要らない
要らない
わたしを捨てたらどうなるの
私はその後どうなるの
助けて 教えて 行かないで
◇
夏のはじまり
そういえば今は夏だったね と
きみのシャツを見て思う
そういえば胸が痛いんだね と
きみの姿に気付き思う
形を見せずにあがる花火は
数文字だけの言えない火薬
言葉に出したら弾け散る
2言3言の見えない火薬
花火はきっと見せない 見えない
◇
星の欠片
輝きをやめるとき
あの子はどれだけ泣いたのだろう
星になったとき
飲みかけの紅茶はどうしたのだろう
あの子が遺した星屑を
私は大事に撒き散らす
あの子が星になる前の
綺麗な姿を知っているから
私は大事に撒き散らす
あの子が生きた星の欠片を
◇
風邪
嘘を、脱いで脱いで、
脱いで
余計なものを剥いだ心と
散らかる嘘
あなたが好きだと訴える
裸の心は訴える
嘘を、脱いで脱いで、
脱いで
あなたの「好き」が決壊した
嘘を脱ぐと脆くなる
素直になると風邪をひく
それでもあなたが好きで、欲しくて
◇
靄
空っぽのきみと抱き合って眠ろうか
午前3時
積もった吸殻
飲みかけのコーヒー
朝を拒む
ちぐはぐな2人から始まった
アイのない結末
生きたまま殺されるのも
息ができないほど繋がるのも
どちらも愉快だね
と
眠らない2人に
午前5時
◇
最期の場所
最期の場所を探して歩く
こういうときは五感が鋭い
最期の場所を探して歩く
まだ信じてる救われる夢
最期の場所を探して歩く
足を止めない私の揺らぎ
最期の場所が決まったならば
救われる夢の世界が滲んだ
◇
公開処刑
まさか私がなるという
練習台の処刑場
よくある話だ友達が
愛の言葉の練習台
刺さる愛の矢彼の言葉
あの子に贈る「好きです」を
笑ってえぐって引き抜いた
こんなあるあるな舞台は
あるあるだから舞台になると
処刑場から見える景色は
笑える程 アトから滲んだ